坂の上の雲 29日 日曜日 夜8時放映開始

大河ドラマの仕事に関わるのは20代からのひとつの目標でした。映像の仕事で食べていこうと思った時に「やりたいこと」「影響力があるもの」をとても考えた時期があって、そんな中にNHKの「紅白歌合戦」と「大河ドラマ」と「NHKスペシャル」がありました。なんとか、ようやく掴んだのが2006年制作2007年放映の「功名が辻」のオープニング映像の仕事です。何度も「前例がない」という意見と戦って、ならば「前例のないことを目標に」オープニング映像をディレクションして、好評を得ることができました。その完成を見るや否やお話をいただいたのが今週末に放映開始の「坂の上の雲」のタイトルバックの演出です。司馬遼太郎氏は生前、この話は映像化はムリだろうと、諦めていたそうです。脚本家の野沢さんがそれをなんとか映像化しようと奮闘いたしましたが、残念ながら亡くなられました。そして、NHKの有志がそれを受け継ぎ、制作に突入したと聞きました。僕自身は2006年の年末にお話をいただいてから丸3年が経とうとしています。今回の依頼は「タイトルバック(今回はエンディングで流れます)」とドキュメンタリー部分の地図や写真のデザイン。そして、劇中のテロップなどの書体、ポスターや宣伝用のあらゆるものまで「ドラマ に関わるデザイン」という形でドローイングアンドマニュアルの仲間が頑張っています。タイトルバックで提案したアイデアやコンテはおそらく50ヴァージョンは下らないのではないかと思います。何度も何度も話し合い、時に会議室で、時に居酒屋で(笑)、司馬遼太郎氏の原作を読み、主役の3人を思い描き、脚本とにらめっこして、考えてはボツにしてきました。そして、今年になって、少しずつ形になりはじめて、ドラマというものができあがっていくのを端から噛み締めながら今日に至ります。仕上げの行程を考えるとギリギリの今年7月に白馬の山頂に400kgもの重さがある機材をNHKのスタッフの方々と僕と僕の助手で手分けをし、徒歩で山頂を目指し、約1週間、毎日午前3時から極寒と酸素の微妙に薄い山頂付近で撮影をしてきました。合成やCGではない映像を狙って。音楽は久石譲さんが担当し、NHK交響楽団が演奏しています。(曲名 : Stand Alone 歌 : サラ・ブライトマン) 
最終的に決めたタイトルバックのコンテに走り書きしたコンセプトがありました。

—絵コンテのコンセプトより—

現代の若人に向けて。
下を向いて歩くべきではない。
先人達が照らす道をしっかりと見つめて
遠くにそびえる頂の向こうに
眩しいほどの未来を見つめて。

「前をのみ、見つめて歩く。」(司馬遼太郎 坂の上の雲の一節)

前を見つめて。
しっかりと歩を前に進めよう。

こんなことを書いてありました。自分で書いたのですが。日曜日の29日に第一話が放映されますが、最終話の13話が放映されるのが2011年の年末です。1話が1時間半もある長いドラマです。あと、少なくとも丸2年を費やして、完成、となる大作です。手早く創ってしまう昨今の映像制作の流れの中で、おそらく、これほど時間をかけて丁寧に映像をつくる仕事はもう機会がないと思っています。みなさん、どうか、日曜日は裏番組の亀田VS内藤戦ではなく、坂の上の雲を見てください(笑)! エンディングロールのタイトルバックまでしっかりと! いや、隅々まで。

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