デザインの現場

僕は時々、自身が所属するデザイン事務所の現場で、そこで創られたデザインに大雑把にダメ出しをする。大雑把に、というのは細かな指示や修正という類のものではなく、「ダメだね」と一蹴してしまうようなダメ出し。そのダメ出しに、それまで続けてきたスタッフは困惑したり、落ち込んだり、奮起したりする。ダメ出しをした側には明確な確信の一端をつかみかけているが故の意見であり、そうしてつかみかけているその瞬間が言わば、チャンスとも言える。伸びしろを大いに成熟させるチャンスなのだ。そこで、「ここをさあ。」なんて重箱の隅をつつくようなことを言ったり、「こうなんだよ」なんて答えのようなことを言ってはいけない。「ダメ」の一言でいい。ダメが出されたデザインは時に蜂の巣をつついたような騒ぎになって、プロデューサーは右往左往し、スケジュールの調整に奔走したりと大変な作業が待ち受けている。もちろん、僕自身これまで何百回と経験してきた場面だ。そういう、切羽詰ったような場面に底力を見せるような現場は本当に頼り甲斐がある。ダメ出しの先に見える、ひとつの価値だ。そして、ダメを出した本人を含めた、そのプロジェクトに関わる現場が何かを掴む。「あ、ここだったか」と、突破口のようなものを見つけ出し、そこへ掘り進む。ダメを出されない現場のデザインは、なんだか綺麗だけど人影がない新興住宅地のような風景に見える。整然とした流れ、潔癖な工程。一方、ダメが出されるような現場はまるで無理だと言われたトンネル工事を進める工事現場のようだ。泥まみれで汚く、途方にくれる。デザインの現場とは一体どういう風景だろうか。僕のデザインの現場は泥まみれだ。だから、ひと仕事終えた後の飯は格別にうまい。

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