次、いってみよー! (ザ・ドリフターズ いかりや長介の名言より)

去年の年末に腫瘍が見つかった。お医者さんは「とっちゃえば大丈夫」と言った。ホントのところ、夏ぐらいからうすうす気がついていた。気がついてたけど、検査のたぐいを避けて、ひとり感傷にふけることもあった。「ああ、これが最後かもな」そんな風に考えながらひとつひとつの仕事や大学の講義をしていた。いよいよ、と思い、病院へ。案の定、だった。でも「とっちゃえば大丈夫」の言葉に救われた。幸い、良性のもので転移もなく、ほんとにとっちゃえば直った。死ぬかと思ったぜ、命拾いしたぜ。そう考えたら、いつかやろうと思っていることとか、周りの目を気にしていることとかがなんだかすごくもったいなく思えた。今日は、大学の卒業式。命拾いした体験をひっさげて、今日もいつものように説教しようと思う。「ごちゃごちゃいってねえで、やってみせろ」っていう調子で。すっかり情も移ってしまったかわいい教え子達が卒業する。おそらく、午後に控えているボクのスピーチは毎年のことながら泣きじゃくってロクなことが言えなそうだ。なので、ここに書いておこうと思う。いろんなことがあったし、清々することも、後悔することもあるだろう。今日だけは許す。思い切り泣きじゃくり、愚痴をこぼして、感傷に浸れ。そして明日からは、もう次が始まる。いつまでも過去をひきずるな。いつまでも思い出に浸るな。次、いってみよー。明日からオレも次にいくぜー。

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ひと論

昨晩(というか朝w)、講演のスライドをまとめながらふと自分を振り返ってみた。会社員でいた頃はよくわからなかったけど、独立したりした後は何かと「ひと」について喜んだり、悩んだりした。自分が社長なんていう立場になってしまうと基本的にスタッフはみな「従業員」で、利害関係がある。できるだけ計算の無い仲間意識で望んでも、どこか「お給料を決める側」「評価される側」という関係があって、うっすらと壁のようなものがある。よく「社長は孤独でなければいけない」と言われるが、生まれてこのかた兄弟のいないひとりっ子の自分には、この「孤独」が一番キツい。とりわけ、スタッフが次のステップを踏み出そうと、自分の会社を辞めるなんていう場面はポーカーフェイスでいられない。14年くらい社長をしているけど、ここはいつまでたってもドライになれない。でも、35歳を過ぎたあたりから少しオトナな考えが芽生えた。離れていくスタッフの背中を見て、本心から成功を願うなら、その瞬間、ものわかりのいい「いい社長」を演じるより、その瞬間は冷たく接しながら、一生少し離れた場所から見守るのがいいんじゃないかと。この考えは、教鞭をとっている大学での学生たちにも同じように接している。「ひと」に支えられてこれまでやってこれた自分が自分の時間をどれだけ「恩返し」に使えるかと思ったとき、そこにあるのはもう「自分が持ちうる時間」つまり一生を捧げることなんじゃないかと。毎年、この時期には1000通近い年賀状を書き、一年を通して「飲み会」なるものは元上司か、つきあいの長くなった以前の同僚や以前の部下、後輩のスタッフや教え子達ばかりだ。今日はいつもとはちがう大学で講演をする。「ものづくり」というテーマなのだが、きっと「ひと」の話ばかりになると思う。精神論はいつだってやっかいなものだけど、そこに喜びや達成感があるとするなら、素直に僕は論じたいと思う。精神論なんていうアカデミックなものじゃない。ひたすらアナログな「ひと論」という感じかな。

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面白いことを生み出して喜んでもらってそれで食べていければいい。

デザイナーの水野 学さん、古平 正義さん、平林 奈緒美さん、山田 英二さんの共著「SCHOOL OF DESIGN」の中の一節にこうある。「フリーランスに叱ってくれる上司はいない」。クライアントの苦言や親兄弟のお叱りがあったとしても仕事を前にした「育成の名のもとの叱り」は、なるほどそこには無いかもしれない。フリーランスになる、または独立して会社を起こす、というある種の一念発起も、大抵はどこかの企業にしばらく在籍して、そこで力を養ったり、人脈を拡げたりしてからアクションを起こす。そうしないと力強い一歩を踏み出せそうにないし、そもそも独立心も会社員のひとりとしてやっていた時に芽生えた野心が背中を押す。僕もいくつかの会社に従業員として在籍した経験をひっさげたし、周りを見回してもそのほとんどがそう。4年前、そんな独立のセオリーを軽ーく乗り越えて、僕の教え子が旗を揚げた。大学在籍時に会社をつくってしまった。彼らは会社員時代の人脈も、会社員時代の上司のお叱りもなく、自分たちの力を信じて出港した。まずはこの無鉄砲なまでの船出に拍手を送りたい。井口くん率いるtymote。Webを見れはその後の4年間の足跡は辿れるし、一部の人たちには言わずもがなの活動っぷりだ。その井口くんが金沢で講演をする。eAT Close College イート・クローズカレッジ( http://eatx.bp-musashi.jp/close/ )。本来の目的は若手にエールを贈るための講演である。しかし、僕にはそれだけに見えない。まずは就職して、その後、もしかしたら独立。なんていうちょっと生温いクリエイター独立の流れに一石を投じる活動の一端を覗かせていただける絶好のチャンスとみていい。つまり、すでにもう独立をして何年にもなるフリーランスや経営者にこそ聞いて欲しいと思える。(まだ、何を話すのかは知らないけれど(笑))。おそらく彼らのこの4年間はそれなりに厳しい戦いを続けてきたことは想像に易しい。このカレッジを主催するのも百戦錬磨の戦いを経て、今、金沢を盛り上げようと奮起するCENDO代表の宮田くん。選抜された講演者のラインナップを見るだけで「狙い」が見て取れるし、その嗅覚は鋭いと思う。大学生がその大学生活の半分以上に「就職活動」という時代遅れの活動に時間をとられていることを思うと、よっぽどこういう講演を聞いたほうがいいとさえ思う。いや、むしろ、そういう就職活動を進めている企業の人事部の方々や大学の就職課の担当の方々にも覗いてほしい。いや、大学生の親にも。就職活動に一喜一憂していることこそ、実は何の生産性もないことで、時代遅れだ。旧態然とした「就職」という寄らば大樹の陰的な発想はもうどこにもそのような手ぬるい空気が存在しない。就職にだって、この独立心のような野心が必要だ。この「上司のいなかった」彼らのような「現場」が今のクリエイションの世界共通の「面白いことを生み出す生産現場」であることは間違いがない。独立することとか会社員のままでやるとか本当はどうでもいいこと。独立する事は就職した会社がいやだったから、なんていう理由でできるほど甘いものではない。いつだってクリエイターやデザイナーは「面白いことを生み出して喜んでもらってそれで食べていく」ことがしたい。そして、面白いものが生み出されれば、国も言葉も、そして経歴や人脈も関係なく世界が注目する。そこに一直線に向かう姿勢の、そういう一端に触れる機会はそうそうない。

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誰かの夢

大学にて新しい年度になって2ケ月が過ぎた。毎年そうなのですが、「ね、何やりたい?」と学生にしつこく聴いてまわる。4年生ゼミでもそうだ。4年生にとってはことさら大学生最後の年という大きな期待やプレッシャーがあるので、ちょっと空気も違う。学生に限らずデザイナー、もっと言えば作り手は何がやりたいのか、何を創りたいのか、まずはそこからなのだ。でも、毎年、この6月くらいの時期ちょっぴり落ち込む。学生たちの出揃ったその「やりたいこと」がそのどれもが「自分がやりたいこと」でしかない。誰かのために、とか他人のために、もしくは誰かに見せたいというものが少ない。作り手という意識はまだまだ半熟のそれで、「誰か」という架空のお客さんや仮説の中の自分のファンに向けた構想を持つというところに至らない。「やりたいこと」というのが趣味の域から脱しないことが多いのです。こういうことを消費者化というらしい。誰かにやってもらう、サービスしてもらうということに慣れきった意識がいざ作り手になったとしてもなかなか誰かのために創るという意識になれないということだそうだ。なかなか意識を変えられず、ひとりよがりすぎるそういう「やりたいこと」を見せられた時、作り手という存在はどういう存在なのか、どうしてものをつくるという道を選んだのか、そういうことを考えるいい機会だと思って向き合って欲しいとも思う。僕が落ち込むのはそういう考えが出ないことではなく、そうさせてしまっている先輩である僕らに多いに責任があるとあらためて目の当たりにしているからだ。作り手がタレントまがいにメディアに登場して、自分の成果を誇らしげに語る姿を本当に胸を張って見せられるだろうか。語っている奇麗ごとを嘘の無い正しい姿として見せられるだろうか。昔に比べてデザイナーという職業は市民権を得るくらいにメディアを通してアピールできているだろうか。僕は現場にいてこういう薄っぺらい意識を浸透「させてしまっている」責任をすごく感じる。中には本当に面白いと思えるものに出会う。誰かに楽しんでもらおうとして作品を作ろうとしているその姿勢に出会えた時、本当に救われた気分になる。活躍している諸先輩方にあえて言う、どうか後輩達にいい背中を見せてあげてください、と。どうか、伝えてください。誰かに喜んでもらえることの充実感を。その姿を見せるべき目標は「次に発注してくれるクライアント」ではなく、将来の夢にサッカー選手やお医者さんなどと肩を並べてデザイナーと言ってくれるたくさんの小学生を生み出せるように。

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Nit

HITSPAPERさんが主催する「Nit」というスクールイベントに講師としてお招きいただきました。(すてきな紹介文、ありがとう)。僕、最近、新しいことはあんまり探求していないのですが、いいのかな…。もっぱら「オーソドックスって何だろう」とか、「ベタって何?」とか、そんなお題を自分に課して映像とか作っています。きっとそのようなことを話せばいいのかなあ、と思ってます。コソコソと、新しい機械をいじって、最新のテクニックを駆使しつつ、王道の映像をつくって、いきつけの商店街のラーメン屋さんのおばちゃんに「見たわよ、素敵じゃなーい!」なんて言われるような映像、いいですね(笑)。ここ数年は、大学で先進性を研究する一方で、「王道とは何か」というのを映像やWebの表現のテーマにしています。僕は今、「映像で見せる取扱説明書」とか「旅番組」とか「テレビショッピング」というジャンルに夢中です。深夜になると急にテレビにかじりついたりしています。これらのジャンルにデザイン性の高いクリエイターが必要になるのは時間の問題かなあ、と思っています。ちょっとそんな足がかりに、仕事の片手間に映像つくったりしています。そういうの、お見せしながら、いろんな話したいと思います。映像つくってみたいなあ、なんて思っている人、よくわからないけど暇な人、是非、お越し下さい。重ねて言いますが、新しくは、ないです(笑)。最新の映画より、ちょっと寅さんの「男はつらいよ」とか見たいかも、なんていう感覚、近いかもしれません(笑)。

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やりたいことはやればいい。

昨日は三鷹にある明星学園高校で講演しました。高校生へむけてのキャリア教育の一環としてのものでした。なんだかとても新鮮で、学校へ到着するや、ぶああっと高校時代を思い出して、終止浮き足立ってました。大学のキャンパスみたいで、のびのびとした校風が感じられました。思い返せば、自分も高校時代は「進路」というものをそれまでの小学校や中学校に比べて少しは真剣に考え始めた時期です。そんな揺れ動く世代に向けて、「ものづくりを生業とする」ということを話したのです。大学受験に失敗したこと。仕事を始めてはみたものの、うまくいかなくて転職を繰り返したこと。何かを見いだしたくて、後先を考えずに無鉄砲にニューヨークに渡ったこと。そして、なんだかんだと続けてきた映像の仕事も20年続けているのにいまだに胃が痛くなる日々を送っていること(苦笑)。やりたいことがあるのならば「ひるまない」ということを話しました。僕のあの頃と大きく違って、今は「情報過多」です。なんでもPCやケータイで検索すると「知った気に」なります。この知った気というのが少々クセモノだと思うんです。誤解を恐れずに言えば、まず、自分で体感、経験していないものは基本的に信じない方がいい。「ネットにこう書いてあった」なんていうことを本気にするほどバカらしいものはないと思うんです。ましてや、自分の未来を考える材料としてはあまりにも安上がりです。だから「やる」ということを大切にしようよ。という話。「やりたいことがある」という話を聞けば「やれば」と直球に話したい。まずは「やってから」。ずいぶんと世間は口の達者な感じになったように思います。でも冷静に見回せば有言実行している人は本当に少ないことに気がつきます。僕も、まだまだやりたいことがある。数年後、数十年後、この講演を聞いていた生徒と会ってみたいなあ。

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宇宙

我が菱川ゼミの一員から嬉しいニュース。宇宙の撮影に成功!。いやはや、本当に実現するとは思いませんでした。春先に「卒業制作は、「宇宙」でいきます」「へ!?」なんていうやりとりから、さくさくと準備して。実現。厳密には「成層圏の映像」ということになる。ハイビジョンで撮影された、撮って出しのその映像は最近感じることの少なかった震えが込み上げてきた。実に美しい。思い返せば、僕は大学での講義で「自然ほど美しいものはない」という話を時々してきた。Yann Arthus-bertrandのHOMEのようなものを自分でも撮りたいと常々思っている。日本中の風景を、田園風景や山々や都市などを、可能な限りの美しい技法で残したい。そんな自分の夢の一端に触れたような刺激を教え子からもらっている。まずはその行動力に拍手を送りたい。撮影地カナダにおいての協力者とやりとりするためにせっせと「英会話」の本を読んだり(笑)、世界中の宇宙の撮影に関する記事でまたもや英語と格闘したり(笑)。せっせとアルバイトしてHDのカメラや渡航費を貯めたり。で、実現してしまうのです。カナダでの奮闘ぶりはディスカバリーチャンネルに密着取材されたとのこと。うん、あっぱれ。今年の菱川ゼミも去年に負けず劣らず楽しみなラインナップとなっている。まずは朗報が届いて、テンションがあがりそうな予感がする。もう後期になって、いよいよ本格的に「ゼミ!」なのです。宇宙からエネルギーをもらったところで、ガンガンいきましょう。卒業制作展お楽しみに!

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福井

今月は二回目の講演で福井県に行きます。今週末土曜日にふくい産業支援センターにて講演させていただきます。僕は初福井です。「福井県」は僕にとっていいイメージしかありません。しかし、その印象が具体的なものとしてイメージできません。でも、なんだか印象がいい。不思議です。そんな不思議な印象の場所から映像についての講演を依頼されました。どんなことを期待されているか、ただただなんとなくその「期待」を想像しながら、これまで映像師としてやってきた20年間を洗いざらい話したいと思います。どうして数ある職業の中からデザインを、とりわけ映像の分野を職業として選んだのか。どうして、飽きもせず40歳の今まで続けているのか。苦労話や嬉しかったこと。自分のポジションをどうやって考えてきたか。などなど。僕の話は決して「これが正しい道」という話ではありません。いや、むしろ寄り道ばっかりしましたし、遠回りばかりしてきました。毎回、仕事を請け負う度に「これでいいのか」と苦悩します。そして、毎回完成した夜は「ああよかった」とほっとしながら、夜中に一人で晩酌します。そして、この10年くらいはデザイン事務所の社長という立場での話。そしてこの5年くらいは大学で教鞭を持つ身としての話。この調子だと、もうしばらく映像やデザインを生業としていくことと思います。実は「なぜ、こんなに自分は飽きないのか」は自分でもわかりません。でも、いままでやってきた経験は目一杯話すことができます。そんなマニアックなただの「映像好き」の経験談にしかならないかもしれませんが、近県の方やもちろん福井の方で映像やデザインに興味のある方、かつ、せっかくの土曜日に私の話を暇つぶしにお聞きになりたいという奇特な方。是非、お越し下さい。お待ちしております!

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交差

先週の土曜日、宣伝会議のアートディレクター福岡講座に講師としてお招きいただきました。前回が約2年前(だったかな?)で、久しぶりの博多。受講するみなさんはそれぞれ、デザイナーとして現場でお仕事をされている方々です。とっても緊張しました。「授業」的なものは、大学などもあってか、少し慣れてきた感があるとはいえ、現場で実際にやっている方々へむけての「講座」。決して受講料は安くないはず。「何を持ち帰ってもらうか?」をずっと考えてました。考えてもあまり、決定的なものが浮かばないまま、会場へ。前半は、僕の周辺の出来事を話しました。何か参考になってもらえるものはあるかもしれない、と。裏話や苦労話などを交えて。後半は出していた課題の発表とその講評。課題のお題は「自分の出身地のプロモーションプラン」です。自分の出身地のプロモーション企画を、現役のデザイナーが考える。とても有意義だと思いました。それぞれに思い入れがありながら、その「思い入れ」の部分をどのように他人と共感するか。とか、出身地をデザインの力で魅力的に見せる。など、デザイナーだからこそのアイデアが次々に出てきます。プレゼンの仕方も様々、ひたすら沢山いろんなものを作ってくる人や、資料などはそこそこに話で引きつけようとする人、など。1時半から始まった講座は予定終了時刻5時45分だったのにもかかわらず、結局、1時間半もオーバーして、7時すぎに終了。6時間、たっぷりと濃密にデザインとクリエイションの溢れる時間でした。その後、懇親会へ。それぞれの仕事の悩み、はては人生相談的なものまで。この講座を受講しようと思った時から何かが変わっている気がします。何か「突破口」のようなものを、じたばたしながら探している。実はもうその突破口に立っていると思う。「みんなでなんかやろうよ」とどこからともなく話がでていました。本当になにかができると素敵だなと思う。少なくとも同じ時期、同じ時間、突破口に立った者同志で。週が明けて、また日常が戻ってきた。でもそこには確かに何かが交差した新しい「日常」になっているはずだと思う。また会いたい。次の平林奈緒美さんにバトンを渡します。

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